矯正治療はなぜ必要なのか
2022年12月7日
矯正治療はなぜ必要なのか
奥歯で咬みしまえたとき、前歯も横の歯もしっかり咬んでいますか?ファスナーも歯車も、歯がしっかり咬みあってはじめて持ち前の機能を発揮します。同じように歯は、歯並びのきれいさだけではなく、全ての歯がきちんと噛咬み合い、顎の動きによく合って、食べものを噛めなければなりません。一見きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんと咬み合っているとは限りません。「きれいな歯並び」とは、よく噛める、正しい咬み合わせです。
矯正治療のメリットとリスク
メリットⅠ
矯正歯科の目的は歯並び、咬み合わせの改善にあります。さらに良好な咬合の維持によりQOL(Quoality Of Life)の向上を目指します。
- 歯科疾患の予防
- 顎骨の成長発育障害の予防
- 咀嚼機能の改善と維持
- 口唇閉鎖不全の改善
- 発音の改善
- 顎関越と咬合との調和
- 体のバランスや運動能力の改善
- 一般歯科治療を行うために必要な歯の移動が可能になる
メリットⅡ
矯正歯科治療をすると、性格がポジティブに向かう傾向がるとされています。
リスク
- う蝕、歯肉炎、歯周炎
長期的な矯正装置の装着によって歯の磨き残しから生まれるリスクです。
取り外し可能なマウスピース矯正の場合はこのリスクは低くなります。
- 治療期間の延長
成長予測の困難性、不適切なメカニクス、患者の協力不足
- 歯根吸収の発現
適切な矯正力による歯根吸収は修復され、最小限に留めることができます。また、歯根吸収を引き起こすような矯正力をかけることはできるだけ避けるようにします。
- 歯肉退縮
矯正歯科に伴い、歯肉の退縮や付着歯肉の喪失を生じる事はあります。このような減少は、歯を支えるための歯槽骨がなく、角化した付着歯肉がほとんどない場合に特に頻繁に認められます。歯肉退縮を認める歯については、治療開始前に付着歯肉を増大して歯肉を上げるなどの処置を考慮します。
矯正治療でなぜ歯が動くのか
歯はとっても硬いし、顎の骨にしっかり埋まっているのにどうして矯正装置をつけると歯が動くのでしょうか。
歯と歯槽骨(顎の骨の中でも歯周囲の骨のこと)の間には歯根膜というクッションのような組織があります。そのため、健康的な歯も実は咬んだりすると動いているのです。ちなみに、歯根膜の厚みは0.3mm程度です
歯に矯正力が加わると、歯根に圧迫された側の骨が吸収され、反対側にできた隙間には新しい骨が作られます(再生)。このように、吸収と再生を繰り返し、結果として歯が移動していくのが歯列矯正のしくみです。
骨が作り替えられるのを待つので、歯を動かすはゆっくり少しずつになります。
やみくもに強い力を加えたからといって早く動くというわけではありません。力をかけすぎれば、場合によっては歯根や周囲の骨に大きなダメージを与えてしまいます。歯や周囲の組織に負担をかけずに、体がもつ自然のペースで歯を動かしていくことが大切です。
矯正歯科治療の限界
- 骨格的な不正に対する歯の移動の限界
- 歯の移動による顔貌変化の限界
- 上下顎の正中線の一致
- 過去の抜歯や先天欠如による空隙閉鎖
不正咬合の種類と治療法
上顎前突(出っ歯)の治療法
成長期で骨の大きさに問題がある場合は上顎骨の過剰発育を抑えたり下顎骨の成長を促進したりします。これは成長の早い時期(4~10歳)に行うのが望ましいです。
さらに、適切な矯正装置で上下の歯を動かし、正しい咬み合わせにします。
成人で特に顎の大きさにもんだいがある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもまれにあります。
下顎前突(受け口・反対咬合)の治療法
成長の早い時期(6~8歳)に開始するのが望ましいです。同時に、成長期で骨の大きさに問題がある場合は下顎骨の過剰発育を抑えたり、上顎骨の成長を促進したりします。
成人で特に顎の大きさにもんだいがある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります
叢生(八重歯など)の治療法
成長期で骨格に問題がある場合は成長期期間中上下の顎の成長を管理します。歯だけが問題の場合は、永久歯がすべて揃うまでしばらく観察を続けることもあります。
しかし、ガタガタのために上下の歯がうまく咬み合わない場合には部分的に悪い所のみを早期に治療する場合もあります。永久歯がすべて生えそろった段階で、最終的な咬み合わせを獲得します。
開咬の治療法
成長期で骨格に問題がある場合は成長期期間中上下の顎の成長を管理します。指しゃぶりや舌の癖がある場合には、適切な矯正装置を用いたり、舌や口の周りの筋肉のトレーニングを行いそれらの影響なくし、正しい咬み合わせにします。これは成長の早い時期(4~8歳)に開始するのが望ましいです。
鼻や喉に慢性的な病気がありいつも口呼吸をしている場合も顎の発育に問題がでることがありますので、耳鼻科の先生の診察も必要になることがあります。
過蓋咬合の治療法
成長期で骨格に問題がある場合は成長期期間中上下の顎の成長を管理します。これは成長の早い時期(8~10歳)に開始するのが望ましいです。
一般的に引っ込み過ぎた上の前歯を先に治療します。
監修 大串 博
歯科医師臨床研修指導医
日本歯周病学会 専門医
日本口腔インプラント学会専門医
日本臨床歯周病学会 歯周病指導医・認定医 ・歯周インプラント指導医
日本顎咬合学会 認定医
日本アンチエイジング歯科学会認定医
日本歯科医師会認定産業歯科医
インビザラインダイヤモンドドクター
日本審美歯科学会会員
日本血液学会会員
点滴療法研究会会員 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
日本歯科医師会会員
「鬼手仏心」
歯科医になった時からの座右の銘です。
生涯常に研修・精進、メスを置くまで終わりのない道を登り続けます。